にこ繭。(cocoonPのBlog)

はてなダイヤリーからインポートしたかつてのBlogの跡地です。

二次創作のアイデンティティと「出口」

うしわかPがBlogでこんなことをお書きになっていました

なにをどう動いているかというと、「アイマスMADのDVD販売イベントはやれるかどうか」、という、その可能性を調べるために動いています。

エントリのコメント欄にも書いてきたんですが、そのイベントだけ局所的に見たら多分お金で解決できる問題なんですよね。そしてバンナムの黙認という現状に対してリアクションを迫る行為なので、今のニコニコでのアイマス動画の隆盛を一瞬で崩壊させることになるリスクも負っている。そして、うしわかPの兄上が極めて注意深く行動する誠実なひとだったとしても、そのイベント単体が成功したとしたら、第2第3の同じようなイベントを行いたい人物が現れ、そしてその人物が注意深くもなく不誠実な行動を取ることは大いに考えられます。昔から「同人ゴロ」っていっぱいいますしね。そうなったときニコニコにおけるアイマス動画に対して暗い影を落とす可能性があります。今まで、たとえばALTA VISIONにMADを流すとかそういうイベントが話だけ出ては消えていったのもそのあたりの議論があったからでしょう。

また根本的に、MAD動画をDVDで販売するということ自体、『楽しいこと』なのだろうか、とも思いました。
もしそれが楽しい事なのであれば、同人でやろうとするPがすでにいてもおかしくないのではないでしょうか? 手描きPなら現在の即売会の暗黙の了解の下でもそれが可能であるように思うのですが(自分は同人界隈にそんなに明るいわけではないので誤った認識かもしれませんが)、じゃあなぜそれを誰もしないのか、と考えたら、そのために負うさまざまなリスクや労力に見合った楽しさは得られないと思うからなのではないかと思うのです。

自分は、もし「そういったCGMの商業流通によってクリプトンの伊藤社長の言うところの「出口」を用意したい」と考えるのであれば、一枚のDVDを販売するという局所的な手法ではなく、たとえばニコニコ動画ピアプロのような、元コンテンツのディストリビューター自体がバンナムおよび原版権を持った権利者と直接折衝する以外には有効な方法はないんじゃないかなーと思います。あんまり成功したとは言いがたいですが、ニコニコ動画上ではGirl Next Doorが自らのPVでそんなことをやっていましたし、ピアプロやzoomeでもうぇぶたまが曲を募集していましたし、やはりぼかろ界隈で最近も新曲をぼかろに歌わせるキャンペーンを行っているアーティストがいますし。

動画の作り手がなぜ二次創作という形で動画製作を行うのか、という根本原因は、そのコンテンツが好きだから、というのがほとんどすべてでしょう(このBlogでもATollPが「好きじゃなきゃMADなんて作らない」と言っていたことを以前紹介したと思います)。純粋に自分で何かを「創造」したいと思っているのであれば、0からオリジナルものを製作するほうがその欲求を満たされるに決まっているわけですから。アイマス動画にはすでに「オリジナルを作るよりも手間がかかる」ようなものもたくさんありますから、二次創作のほうがオリジナルよりも手軽に作れるから、という理由はあまりないのではないかなという気がします。
つまり、二次創作という日陰者であり続けるコンテンツは、その出発地点、入り口からしてオリジナル創作とは異なったアイデンティティを持っているため、その好きという気持ちを共有したい、見てもらいたいというのが製作者のモチベーションになっているのではないでしょうか(たとえば、ぼかろ曲を自らのメジャーデビューのための『踏み台』として考えておられるPもいるかもしれませんが、自分の周りにはそういう方はいらっしゃらないのであまりそれについて考えたことはありません)。
ひろゆきはよく、「ニコニコ動画はたんなる動画配信サービスではなくコミュニティである」と言っています。いわゆる"ニコマス"も、その中にあるひとつのゆるいコミュニティであることは間違いありません。創作物の発表の場+コミュニティという体裁であるニコ動やzoome、ピアプロ、pixivなどのサイトは、その時点ですでに「出口」たり得ているため、作り手がさらにそこから先に何かを求めないのではないかなーと思いました。